弊社は、「壁面走行ロボット」を開発しました。これは、構造物点検で活躍するロボットです。
コンクリート構造物を点検する際、叩いて判断する打音が一般的です。打音を行うには、足場を組まなければなりません。足場を組むと膨大な費用が発生します。「壁面走行ロボット」は足場レスで点検できるのが特徴です。
サイズは搭載する検査機器で変わって来ます。弊社が、プロトタイプとして制作した「壁面走行ロボット」は、50cm四方くらいで、持ち運びできる大きさです。このタイプで1キロくらいの検査機器を搭載することができます。
「壁面走行ロボット」は、検査機器を搭載する筐体と、ドローンのプロペラとタイヤで構成されています。プロペラは2種類あり、一つが加重をキャンセルするプロペラ。例えば、重量が3キロなら、3キロのプロペラの推力を得て、加重をゼロにします、もう一つが、ロボットを壁に押し付けるプロペラ。走行はプロペラでなく、タイヤに装着したインホイールモーターによって駆動します。
検査には様々な手法があります。ひとつは打音検査。ハンマーでコンクリートを叩いて、その音で検査するというものです。「壁面走行ロボット」はプロペラが鳴るため、音を聞くことはできません、そのため、壁に対して加速度センサーを押し付け、ハンマーを叩き、発生する弾性波を拾って解析する手法を取ります。また、電磁波レーダーによる検査。近接でレーダーを当てることで、コンクリートのひび割れを確認する手法です。他にも様々ある検査機器を「壁面走行ロボット」に搭載することで、容易に検査が行えます。
「壁面走行ロボット」ありきではなく、検査機器ありきの「壁面走行ロボット」です。壁面を走行するのが目的ではなく、足場レスで、検査機器によってデータを取るためのツールと考えて頂ければと思います。
ものづくり補助金で3Dプリンターを購入しました。検査機器は千差万別なため、特定の形はなく、金型を作って大量生産というわけにはいかないからです。柔軟に制作するために、3Dプリンターは必須でした。また、弊社で3Dプリンターは保有していましたが、樹脂を素材とするものでした。高強度にする必要があるため、カーボンファイバーに対応できる3Dプリンターでなければなりませんでした。
法定点検というのがあり、例えば橋梁なら、必ず5年に1回の頻度で点検することが義務付けされています。点検をするには足場を組み、打音を行う必要があるため、橋梁を有する市町村では大きなコスト負担となります。
また、打音ができる技術者の多くは、熟練の高齢者です。足場を組んで登るには、ハーネスを装着しなければなりません。高齢者が重いハーネスを付けて登るのは大変ですし、リスクもあります。できれば登らせたくないというのが、現場の本音です。
そのようなとき、「壁面走行ロボット」は足場が不要なので、点検コストの削減ができ、人が動かなくて済みます。
壁面を走行するロボットには、磁石で登るタイプ、真空吸着で登るタイプのものがあります。
しかし、磁石はコンクリートには付かないため、使えません。真空吸着は走行に安定性はあるものの、移動速度が遅く、真っ平らな面はよくとも継ぎ目があったり、角度が変わったりすると真空度が剥がれて落ちるリスクがあります。
飛行するドローンを検査に使用することはできます。カメラの画像による検査は、検査したことにはならなかったのですが、法律が変わり、認められるようになりました。ただし、表面検査はできたとしても、接触系のセンサーが使えないため、内部の欠損データが取れないというデメリットがあります。そもそもドローンで構造物に接近すると、プロペラの気流で動作が不安定になります。そのため、高速道路や鉄道でドローンを飛ばし、万が一、ドローンが操縦不能になった場合、車や車両に衝突する危険性をはらみます。特に鉄道では高圧電線があるため、イレギュラーなことが起きる可能性が増えます。
その点、「壁面走行ロボット」は、モーターが動いている限りは落ちませんし、停止しても下に落ちるだけなので、ロボットの損傷だけで済みます。
世の中に検査に有効なドローンがなかったため、「壁面走行ロボット」を開発しました。特許を取得していることも優位性だと考えています。
マンションなど、都市部においての運用は考えておりません。というのは、騒音の問題があるからです。プロペラを回すと大きな音が発生します。また、落下リスクはゼロではないため、人が往来する都市部で稼働できるかというと、やりたくないというのが正直なところです。
そのため、インフラのコンクリート構造物に焦点を絞っています。具体的にはダムや橋梁。そのようなところは音が鳴っても被害はありませんし、落下のリスクに対して安全性が担保できます。
全ての面に「壁面走行ロボット」を走らせるのではなく、目視や赤外線で、目星を付け、ピンポイントで稼働させるのが効果的だと考えています。
管理者様に使って頂きたいと思います。ダムなら国、橋梁なら市町村の担当管理者様。また、点検を請け負う企業様にも導入して頂きたいと考えています。
人なら、ハンマーでコンクリートを叩いて検査する、打音検査を用いますが、「壁面走行ロボット」は弾性波を拾って検査する手法を取ります。この手法は土木学会でも認定されており、多くの現場で行われています。検査を人間が行うか、ロボットが行うかの違いだと考えています。安全性を考えるなら、「壁面走行ロボット」の方が適していると思います。
検査機器を保有する会社様に、新たなツールとして活用して頂く、もしくは、検査機器と一緒にレンタルして頂くということもあるかと思います。
「こういう仕様で作ってくれ」とオーダーを頂けると、その仕様に合わせてカスタマイズできます。また、仕様が定まっていなくとも、「こういう場所で、こういう機器だったら、このようなものはどうでしょう」と提案ができます。ものづくり補助金で購入した3Dプリンターで、最適な仕様で制作します。
中小企業 新ものづくり・新サービス展では、弊社の「壁面走行ロボット」はもちろん、周辺機器や使用する業務無線機器も展示します。
「壁面走行ロボット」は現在、年に1~2台を販売しているペースです。それはまだ、実証実験を積み重ねている段階だからです。
今はまだ、価格も高いですし、騒音という問題に対する改良の余地もあります。改良を重ね、最低でも年に20台は販売したいと考えています。
私は、道路系の財団法人に勤めていた経歴があります。その財団法人には国土交通省の様々なOBが在籍されていて、ダムの所長もいました。その人から「ドローンでダムの点検はできないか」と相談されました。ダムには昔から点検手法はありません。目視だけです。ドローンが点検に使えると話題になったことによる相談でした。しかし、ドローンはダムの点検には不向きと分かっていたので、壁面走行するタイプのドローンなら可能だろうと考えました。個人的に実験してみて実現可能だと分かったので、特許を取り、独立しました。
ダムは永久構造物という認識ですが、当然、リスクはあります。アメリカではダムが決壊し、下流の町が被害を受けるということが幾度も起きています。点検は重要だというコンセンサスもあります。しかし、ダムを人力で点検しようとすると危険が伴います。弊社の新しいテクノロジーで、少しでも負担を軽減できればと考えています。
弊社は、元々、ラジコンの飛行機やヘリコプター事業からスタートした会社です。ラジコンに関することを手掛けていたので、早くからドローンの知見があり、ドローンが点検などに使えることは予測していました。ただ、通常のドローンによる点検だと、大手企業が参入すると考え、ニッチな産業用ドローンに特化させることにしました。
今は、点検や産業系のドローンの開発・製造が多い状態です。例えば、福島第一原子力発電所の、1号機の廃炉の検討事業でも、大手電機メーカーさんと一緒にドローンの開発に取り組んだこともあります。他にも国家プロジェクトの検討業務に参加するなど、特殊な事例が多いといえます。現在は、企業様が抱える課題を、最初の段階から関わり、検討業務を行っています。
最近では、草刈りが自動でできる、草刈りドローンを開発しました。従来の草刈り機は、大型で、乗るタイプのものは300キロくらいありますし、ラジコンの草刈り機でも200キロ前後もあります。それでは生産者さんが運用するには不便です。草刈り機の上げ下ろしは軽トラを使うとしても、何かトラブルが起きたとき、どうしようもなくなります。弊社が開発した草刈りドローンは、10キロという軽さです。GPSによって1cm単位で制御できるため、精度高く草を刈ることができます。そういったものを使うことで、面白い事業ができるんじゃないかと考えています。
今後もドローンを活用して、様々なビジネスを展開し、企業様に貢献したいと考えています。ドローンは飛ぶだけではありません。いろいろなところで使えます。次は、水上ドローンを開発したいと考えています。
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