弊社では、新型のコンクリート強度リアルタイム測定システムを開発し、革新的ICTサービスを提供しています。
コンクリートは建築土木工事の材料として利用されていますが、歴史は古く、コンクリートに類似したものが紀元前からありました。
古いギリシャ時代のパルテノン神殿やローマ時代の円形競技場(コロセウム)、それから水道橋などもコンクリートでできたものですが、ローマンコンクリートと呼ばれ2000年以上経ってもまだ、崩落せずに立っています。と思えば、さほど古くない橋が落ちたり、ビルが崩壊したりということも起きています。同じコンクリートなのに、何が違うんでしょう。
実は、コンクリートは約4週間で固まります。この期間の固まり方で、1000年もつか持たないかの差が出るんです。コンクリートは水とセメントを化学反応させて作るのですが、水が凍っていたり、逆に高温だったりすると反応が悪くなり、良いコンクリートはできません。
コンクリートの強度を確認する方法は、模擬試験体(テストピース)を作成し、養生管理した試験体の圧縮強度試験から求めていました。
しかし、弊社ではICT(センサー)を活用して、水和熱の履歴からΣ28日強度(設計基準強度)を計測するマチュリティ法に基づくシステムを開発しました。
このシステムによって、コンクリートに最適な20度に換算した履歴をウォッチングすることが可能となります。また、従来からある計測装置埋込型の使い捨てではないので、環境負荷低減に貢献できます。
ものづくり補助金は、電子基板が入るケースの金型の製作などに活用させて頂きました。弊社のような資本金が脆弱な零細企業にとって、資金的な援助がとても助かります。
強度のあるコンクリート建築物ができます。もちろん、負荷が少ない神殿や競技場、劇場と、高速道路などとは耐久性に違いは出てきます。様々な条件によって変わりますが、管理してないよりも遥かに長持ちします。
他にも私としては6つの効果を考えています。
(1)躯体に異物を混入しないので、コンクリートの劣化を軽減できる。
(2)繰返し使用可能なのでGX(循環型社会)に適応できる。
(3)養生管理やデータ処理の手間が軽減され、現場の省力化・省人化ができる。
(4)模擬試験体を作らないので産業廃棄物が軽減される。
(5)コンクリートの強度計測と∑28に至るまでの養生管理のDX化ができる。
(6)デジタルデータの保存と共有など、新たな効果が期待できる。
こうしたことから、循環型社会に適応した、新しいセンサーであるという位置づけができると思います。施工の履歴がデータで残るため、建築物がもし、崩落したときには原因も明らかになります。原因が分かれば、解決策も出て来ます。これからの時代、施工の履歴を残せるのは、大きなメリットとなります。また、コンクリートの強度データはエビデンスとしての活用も図れます。
センサーを埋め込むタイプのものは数多く存在します。しかし、弊社は繰り返し使うタイプで、世界初のものです。しかも国内と、アメリカ、ヨーロッパのパテント(特許権)を取得したので、他社では真似ができません。
弊社の技術を採用した作品は、2023年に日本コンクリート工学会から作品賞を受賞しましたし、2023年ACI Concrete Convention 低層構造部門で1位になるなど、権威のあるところから評価され、全世界からも高い注目を浴びています。
大きく分けると建築系と土木系に分かれますが、建築系であればマンションやビル、戸建ての基礎で使うことができます。土木系だとインフラ、橋やダム、トンネルで活用できます。
マンションや戸建ては、このマンション、この戸建てはこういう管理をしたという記録が残せるので、有効な資産価値になっていくと思います。
やはり、ゼネコンさんだと思います。スーパーゼネコンさんからの大型案件は多く、現在、300件くらいは頂戴しています。とはいえ、いわゆる地場コンさんといわれるところでも使って頂いています。
橋やダム、トンネルが崩壊すると被害は甚大です。事実、2012年に笹子トンネル天井板落下事故が起こり、9名の方が亡くなられています。それまでトンネルの表面の仕上げコンクリートは管理されていませんでした。その事件を切っ掛けに弊社のシステムが使われるようになりました。他にも北海道新幹線や北陸新幹線のトンネル、九州の阿蘇の外輪山のトンネル、一般国道のトンネルでも使って頂いています。
最終的にはゼネコンさんに現場で活用して頂くことになると思いますが、弊社のシステムを取り扱って頂くのは、レンタル会社さんだと考えています。例えば測量機器を扱っている会社さん。測量機器と一緒に弊社のシステムも貸し出して頂く、そのような形態を考えています。他にも建材商社さんとか、いろんな会社さんと出会えるんじゃないか、新しい展開が見込まれるんじゃないかと期待しています。
コンクリートのICT、情報化施工はまだ、始まったばかりです。ゼネコンさんから「これは出来ないか?あれは出来ないか?」といった要望もかなりある状態です。そのような要望に対して、また、ものづくり補助金に参加させて頂き、ラインナップを増やして解決して行きたいと考えています。そして、例えばひとつの現場にひとつのシステムではなく、弊社のシステムを2つ、3つと同時に使って頂く、そのような状態になるよう、取り組みたいと考えています。
また、海外展開も考えています。コンクリートは言葉や文化が違っても世界共通です。ジェトロ(日本貿易振興機構)の「新輸出大国コンソーシアムのハンズオン支援企業」にも採択され、国内外の支援者の方々と一緒になって、海外にも働きかけようと計画しています。
私は、1975年に日本大学工学部 土木工学科を卒業し、ゼネコン・土木コンサルタント等の現場経験を経て、建材商社の児玉に入社。執行役員・エンジニアリング事業部長を務めた後、独立し2007年に今のJUST.WILLを設立しました。
その頃は、2005年から始まった耐震偽装事件や、繰り返されるデータ改竄事件に、多くのエンジニアが信頼の回復に心を痛めていた時代でした。また、熱帯林の破壊や産業廃棄物処分が地球規模の社会問題となってもいました。そのようなことから、社名を、JUSTICE(正義)に由来し、WILL(意思・志し)と組み合わせて創作した「正義を志す会社」という意味を込めてJUST.WILLと命名しました。
その頃、コンクリートの専門家である東京大学大学院工学系研究科の野口貴文教授(当時、准教授)と出会い、また、周囲の協力もあり、スマートセンサーシステムを共同開発し、事業化するに至りました。
現在も野口教授とは共同研究や、年間を通じてのアドバイザリー契約も結んで協力して頂いています。
建設現場の監督さんはやることがたくさんあって苦労されています。そんな監督さんがコンクリートの性能評価の管理までやるのはとても難しい。しかも人手不足です。困っている現場の省人化として力になれないかと思い、取り組みました。センサーを無線にしたのも、有線だと埋め込んだのに、作業員さんが誤って踏んでしまい、断線したといったことが多々あったからです。現場を少しでも楽にしてあげたいという想いが強くありました。
ただ、この事業をスタートした当時は、デジタル化や環境貢献は理解してもらえませんでした。「これって諸刃の剣だね」と言われました。「現場には見せたくないものがいっぱいある。それが全部見えると困る」と。それが十数年前ですが、最近は国土交通省の通達で、ICTが推奨から義務化に変わったことで最近は諸刃の剣と言われることはなくなりました。逆に「どのように管理して、どれだけ頑張っているかを、これで証明したい」と空気が一変しました。
今後も現場主義で、現場の負担を減らす事業を推進したいと考えています。
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