弊社では骨伝導集音器「Vibone nezu 3」を開発しました。これは、弊社が特許を有する骨伝導技術を活用した、日常的な聞こえに困っている難聴者の方々をサポートする製品です。
聞こえをサポートするデバイスに補聴器や集音器があります。それらはほぼ、空気振動による音伝達です。空気振動が外耳道や中耳を通して内耳に伝えることを気導といいます。この気導の音伝達では外耳や中耳に問題があって音をうまく感じ取ることができない人には不向きです。でも、骨伝導だと聞こえのサポート効果が大幅に高まります。補聴器や集音器を使用しても満足な聞こえを得ることができない人達に対して効果的なデバイスです。
また、補聴器には音の調整機能がありますが、当然、「Vibone nezu 3」にも備わっています。好みに合わせた低音や高音の調整、環境による周波数の問題修正など、その時その場所に合わせた音質に調節できます。
様々な難聴の方に対して音を届ける、革新的なデバイスだと自負しています。
骨伝導によって聞こえる可能性を感じて頂いた多くのお客様から『伝音性難聴者でも対応できる骨伝導商品が欲しい』『補聴器のように、日常生活全般で使用し続けることが出来る商品にして欲しい』との声を数多く頂いており、そのご要望に応えるため、ものづくり補助金を活用して試作品開発を実施し、その後も改良を重ね、試作機製作を経て、2024年12月に販売を開始することができるようになりました。今回の「中小企業 新ものづくり・新サービス展」は、「Vibone nezu 3」の発表会的な意味合いが込められています。
ものづくり補助金は、試作品開発のための、金型の製作や商品デザイン、回路設計などに活用しました。
聞こえに困ってしまい、生きる希望を失った人が、「Vibone nezu 3」によって聞こえがサポートされ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上する、生きる希望を取り戻すことができます。
日本の難聴者の人数は、厚生労働省の推定では約1,430万人(国民全体の約10%)とされています。そういう方々に「Vibone nezu 3」を活用して頂きたいと考えています。
補聴器の出荷台数は55~75万台くらいで、価格は平均片耳15万円程度です。補聴器は医療機器なので、障害者手帳を持っていると助成金が出ます。自治体によって異なりますが、1~3割ぐらいの価格で購入することができます。ただし、難聴者の方々は約1,430万人いますが、障害者認定を受けられるぐらい重い聴力障害の方は約44万人で、残りの方々は障害者手帳を受け取ることができず、助成金は出ません。そのため補聴器は安く買えません。日常生活に支障はきたしているのに社会からも、商品マーケットからも、見て見ぬふりをされている現状があります。「Vibone nezu 3」はそうした方々に役立つ製品です。
優位性は圧入式骨伝導技術です。この骨伝導振動子の構造・製造方法は特許を取得している弊社独自の技術です。具体的には外耳道の入口付近に圧入することで、発生した振動子から発生した振動をロスなく耳の奥に伝える伝送技術です。それは技術的な優位性ですが、商品的な優位性は、空気振動による補聴器や集音機では医学的に聞こえない人が弊社の圧入式骨伝導技術によって聞こえるようになる可能性があることです。
また、骨伝導によるイヤホンなどは家電量販店でもたくさん販売されています。しかし、それらは全て健聴者がターゲットです。健聴者が音楽を聞きたいというニーズを満たすための商品です。対して弊社の「Vibone nezu 3」は、難聴者がターゲットです。難聴者が音をしっかりと聞きたいというニーズを満たすための商品なので、コンセプトも違ってきます。聞こえるメカニズムは、他の骨伝導イヤホンと一緒ですが、そのような骨伝導イヤホンは難聴者には音が弱くて聞こえません。「Vibone nezu 3」は難聴者がしっかりと聞こえる製品です。
また、価格的な優位性もあります。補聴器は日本国内で平均片耳15万円程度。高価なものだと100万円以上のものもあります。「Vibone nezu 3」は両耳で使えて9万9000円で設定しています。
難聴者でも、多くの人が集まる場所での会話をクリアに聞き取ることが可能です。周囲の騒音を効果的に低減し、重要な音声だけを際立たせるため、友人や知人との集まりでの会話に不便はなくなります。明瞭な聞こえを提供し、コミュニケーションをスムーズにします。難聴者の方の日常の会話での活用はもちろん、聞こえが悪くなった高齢者の方にも適しています。家族で会話をするとき、家族の声が聞き取れなくて不便を感じているとか、家でテレビを見るのに大音量にすると周りの人に迷惑がかかるので困っているとか、そういう方々の聞こえのサポートとして使って頂きたいと思っています。
「Vibone nezu 3」は、これまでの聴覚サポートデバイスのイメージを一新した製品です。首から下げるネックバンドタイプでスタイリッシュです。Bluetooth機器と繋ぐことができるので音楽を聴くこともできます。それでいて音漏れはありません。今まで音楽を楽しめなかった方に最適です。難聴者だけでなく、健聴者でも綺麗に聞こえます。
カラーは、上品なホワイトと、モダンな印象のブラックを用意しています。子どもから大人まで使用できるベーシックなカラーなので、好みやスタイルに合わせやすいと思います。また、防水設計なので雨やキッチンでも使用できます。
骨伝導集音器「Vibone nezu 3」は、自社で量産できる体制を整えています。現段階ではまだ、計画は立てられないのですが、月産1000台ぐらいで考えています。興味を持って頂ける医療系の販売店さんなどとマッチングできればと考えています。また、海外の販路を持っているバイヤーさんともお話をさせて頂ければ助かります。
現時点で、ヨドバシカメラさんで扱って頂けることが決まっています。また、品川のイオンさんでは既に取り扱いを開始しています。他にも全国の手話カフェに置いて頂くことを計画しています。あと、私の前職の仲間が、介護事業の中で取り扱ってくれる話が進んでいます。
他にも、弊社が特許を所得している圧電セラミックスを用いた骨伝導振動子技術を有効活用して頂ける企業さんからのコラボレーションの提案も頂けたらと思います。
視力は眼鏡やコンタクトレンズで手軽に調整できる世の中になっています。しかし聴力はまだ、手軽に調整できる世の中にはなっていません。それは日本の社会制度の問題や聴覚障害の基準、助成金が出る、出ないの医療機器制度のあり方など、様々な問題が複雑に絡みながら社会課題になっているからだと考えています。この「Vibone nezu 3」が、その様な課題の解決に向けた一助になることを願っております。
また、今後の展開としては、北米や中国、欧州、インドなどでも展開する。世界に打って出ることを計画しています。世界には、聴覚障害を持つ人は全人口の5%以上に当たる約4億6,600万人いると推定されています。これはおよそ20人に1人の割合です。そのような、耳が不自由なために生活に困っているとか、仕事が出来ないなどの問題を抱えている世界中の方々の役に立ちたいと考えています。
私は、国内大手電機メーカーに20年ほど勤めていたのですが、自分の人生を考えたとき、もっと世の中に貢献できる仕事がしたいと思うようになりました。その頃、メディアで事業承継問題が話題になっていました。後継者がいないため、廃業しなければならない会社が多くあります。私がゼロから事業を立ち上げるのではなく、私のスキルを活かし、会社を引き継いで経営し、事業を伸ばして行ければ、私のやりたいこともできるし、国の課題にも一石を投じられると考えました。
ソリッドソニックは、創業者である田中哲廣が2008年に創業した、骨伝導技術の研究開発に努めてきた会社です。骨伝導技術は可能性のある技術です。しかも、聞こえの社会課題の解決にもつながります。社会的意義の高い事業であると考え、承継することに決めました。
現在、「聞こえに関するハンディキャップが存在しない社会を実現する」を経営理念として掲げ、聞こえの社会課題解決に取り組んでいます。事業は順調に伸びており、これからも新しいことにチャレンジしながら、経営を推進したいと考えています。
今年、2024年1月14日から7月31日まで、クラウドファンディングで「Vibone nezu 3」に対する支援者を募集しました。目標額100万円に対し、支援総額は約6000万円、730人もの方々に支援して頂けました。これは、日本の補聴器、集音機のクラウドファンディングの日本記録だそうです。
支援者で最も多かったのは片耳難聴の方です、片耳は聞こえているため日常生活において致命的な支障はありません。また、障害者手帳ももらえません。補聴器も付けることもなく普通に過ごしてきた。けれど、聞こえなくなった耳で話を聞いてみたい、音楽を聞いてみたいと思った方々が「Vibone nezu 3」を手に取ってくれました。その方々からはただ一言、「嬉しい」との声を頂きました。「聞こえたときは、涙が溢れて仕方なかった」という方もいました。
また、耳に障がいがあるお子さんを持つご両親にも支援して頂けました。例えば、小耳症という、生まれつき耳の形が不完全で小さいという先天性疾患があります。耳の変形が最も強い先天異常で、片方の耳だけ、または左右両方の耳に症状が現れます。耳孔がふさがったまま生まれると、空気振動で音伝達する補聴器や集音機では聞こえません。しかし、骨伝導集音器の「Vibone nezu 3」なら聞こえる可能性が高まります。耳に障がいがある7歳や8歳ぐらいのお子さんをお持ちのお母さんは、子どもからの「お母さん、聞こえるよ」の言葉に、涙が止まらなかったそうです。障がいがある体に産んでしまったことに対しての罪悪感があり、自分を責めていたけれど、少しは救われた、嬉しいとのことでした。
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